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オタル猫小路から

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その1 猫の通路

私の家の居間には、猫専用の通路がある。
いきなり床がバタン!と音を立てたかと思うと、歌舞伎の狐忠信さながらに、猫が一匹飛び出してくるので、知らない人はたまげてしまう。

今からおよそ二十五年前、この家を建てるまでは、猫が夜遊びに出てゆくと、私が寝る時刻になっても帰らず、戸を開けたままにしておくのも不用心なので困っていた。
兼ねての計画の新築が決まり、設計段階で、工務店に相談したら、社長は「わかりました」といって、猫専用の通路を造ってくれた。
玄関の下方、コンクリートに穴が開けられ、そこから床下に続くトンネルが、居間の余り目立たない隅のほうに通じている。そこに、二十センチ四方ほどの蓋があり蝶番で留められているが、把手がついている。これはもちろん人間が蓋を開けて中を覗いたりするためである。

新居に移った第一日目、仮住まいから一緒に引っ越してきた猫で試してみると、恐がりもせず、堂々とここを通ってくれて入居の儀式を終えたのだった。
覗いてみると、いきなりバタンと猫が地下に落下するのでなく、なだらかなスロープになっている。
仮に二匹が交差しても問題なし。動物好きな社長の配慮が行き届いていた。
当時の飼い猫、コンマとタイスケ。今は亡き二匹の猫にとっても、この通路は重宝だった。
私もこれで安心。猫が夜遊びしていても、枕を高くして眠れるようになった。
通路といっても、ご帰館の場合のためで、蓋を開けられないから、猫が出てゆくのは至難である。勝手に出てゆけないほうがよい、と思っていた。

ところがである。当時このあたりに君臨していたボスの大猫、チャトラが、毎日のように勝手に入ってくるようになって、たまにほかの猫もうちを訪問するようになった。家に入れば、うちの猫の食べ残しをいただけるし暖かい。

チャトラの訪問

ある冬の朝、うちの猫にしては重いなあ、と思って布団をはねのけると、なんと七キロはあると思える大猫のチャトラがお腹に乗っかっていた。
チャトラは、叱られてもゆうゆうと階下に降りてゆき、前足を、通用口の把手に片手を引っかけて、見事なタイミングで少しの隙間に巨体を滑り込ませて出ていった。
それを真似たのかいつのまにか、うち二匹もこの技術を習得した。

月日が流れ、コンマ・タイスケも故人(猫)になり、猫の事務所社員も代替わり、林檎→トマ→珊瑚→慎吾の時代になった。雄猫のトマは出入り技術を一人で(?)覚えたが、雌の林檎は「人間とおなじでなくちゃ嫌」とでもいうのか、この通路を全く無視し続けた。
しかし、忘れもしない二〇〇九年の一月十四日(記念すべき日なのでメモしてある)、林檎がここを通って帰ってきた。出てゆくこともいずれ覚えるに違いない、と確信したのだ。

二月の寒い夜、床下がゴソゴソいう。
鼠でも入ってきたらどうしよう。もしかしたら一昨年、家の前に現れた狸の子か、はたまた妖怪の類‥。
こわごわ例のドアを開けてみると、冷たい風が一筋吹き込む中に、かすかに猫の息づかいが感じられた。フーッ! と猫の威嚇の声。先日見かけた親子のどちらかに違いない。
そんなことが何度もあって、ある日、大きな煮干しを落としてやった。煮干しは暗闇に消えたが、しばらくすると食べているような気配がある。そっと開けてみると真っ黒いしっぽが見えた。
私が中を覗いていると、林檎も珊瑚も駆け寄ってきて、一緒に中を覗く。
そのうち、珊瑚が把手に小さな手をかけて、しきりに開けようと試みるようになった。ゴソゴソ音がすると、さっとそこまでゆく。珊瑚という黒猫は、先年夭折したトマの姪に当たる。どこかトマに似ているのも嬉しい。外へ出さないで育てるつもりだから、世間知らずだ。
外猫と自分の違いに気がついているだろうか。
今年の三月も末の午後九時頃に、ここから出ていった慎吾が、夜中になっても帰ってこない。
もうお父さんになれない体なのに、どこで何をしているのかと思う。

苫まじめの社宅に
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